Goodbye Yellow, Mellow Yellow!!

 「もう最後に立ち会うのはうんざりです!」何人かの友達からそういう話をされた。バブルの暗黒を経てあらゆるものが崩壊した後に登場した90年代の無法地帯と桃源郷。俺たちはそれを過信しすぎてしまったのかもしれないけど、世紀が変わる頃から今度はそういう「俺たちが作って育てたんだ!」っていうものたちが脆くも儚くも消えていった。
 今週は、西麻布の老舗クラブYellowがクローズする。たぶん、今ごろは、フランソワK、それに名門の最後を見届けるため駆けつけたDJ、クラブ業界のひとたち、それに愛すべきお客さんたちであの薄暗い地下の箱は狂乱の渦の真っ只中だろう。俺は、今週一度かぎりの復活を遂げた田中フミヤの<Distortion>と昨晩のLaurent GarnierTobyの晩に踊り収めに行った。フロアはここしばらく見たこともないような活況で、フレンドリーな雰囲気が充満して、笑顔で踊りまくるクラバーたちだけでなく、ブースの中のDJ、ライティングのひと、それにバーカウンターのスタッフたちまでもノリノリで肩を揺らし腰をふっていた。Yellowのあの真ん中にそびえる柱、体を斜めにして行き違う螺旋階段、踊り疲れたひとが死んでる後方のひな壇、ホワイトと蛍光色のNano、そして何よりあのオレンジのスピーカー…すべてが懐かしく愛おしい。懐かしい顔にも結構遭遇したけれど、それにしてもフロア全体が知ってる顔でもおかしくないはずなのに、意外にダンス・ミュージックのプロたちやずっとこの業界にいるひとたちがいなかったことが、現在の暗澹たる状況を象徴しているような気がした。もちろんラスト・ダンスを楽しみはしたものの、どこか釈然としない気持ちだった。例えば昨晩、恍惚の表情でミキサーをいじり倒すロランやその隣で女房よろしくニコニコと踊りフロアを煽るアレックス、それに相当上機嫌そうなフランス人たちに比べて、「I had enough」と言っていたTobyの冷めた様子が印象的だった。つまり、この状況の一番の渦中にいるDJや東京のクラブ・シーンに関わってるひとたちは、さよならYellowと言ってお祭り騒ぎをする気分にはなれないのではないかと。
 いや、ただノスタルジーに浸っていたってしょうがないことはわかってるんだ。年寄りの戯れ言に誰しもが興味を持って耳を傾けてくれるわけでもないし。でも、あのロケーションだからこそフラっと遊びに来る客がいたり、オールドスクールなシステム/セッティングだったかもしれないど低音が体に響くいい音を届け続けたあの場所が今日を境に消えてしまうことが、あまりに惜しくて。ロランが12時半頃に〆を飾るキラキラしたロック(?)の曲を流しつつ、「この素晴らしい場所にお別れしなければなりません」というアナウンスをしたときには、さすがにうるっと来てしまい、奇声をあげながら両手を挙げて踊りまくるYellowスタッフの姿を見たら、ああ、やっぱりここは本当に音楽が好きなひとが集う場所だったんだなと改めて実感した。もう二度と、こういうハコは生まれてこないかもしれないな。

 新宿Liquid Roomも青山Maniac Loveも、いろんな事情で最後を見届けられなかったけど、今回はファイナルの現場に身を置けて、改めていろいろと考えさせられた。ZEROやWorld Connectionの時代からYellowに通いつめた身としては、本当に「あぁ青春が、散ってしまう…」という感じなんだけど、それでも前に進んでいかなけりゃダメなんだと勇気づけられた。昨晩聞いた噂では、Yellowの後継はなく、現在の運営会社は再びクラブをやるつもりだけど、A-lifeみたいなナンパ箱にするとか。ナンパも酔っぱらいもクラブの華だとは思うけど、その一過性の刹那的なビッチやDQNたちの相手をする場所を作っても、なにも残らないと思うんだけど。もし、まだ猶予があるなら、この最終週の盛り上がりを見て考え直してくれないかと思ってしまう。そもそも、音楽に愛がなければ、このお別れにこれだけのひとが集まるはずはないのだし。

最後のYellow Magに、
Where will you go after the party's over?
と書いてあった。それは、自分たちが東京のパーティを作ってきたのだという自負と共に、あまりに殺伐としてしまった東京のパーティ/クラブの状況を言い切ったコピーだと思った。

自分でもなにかしら今後もコミットしていきたいと思っているけれど、個人個人の想いややる気だけではどうにもならないくらい、事態は進行してるのかもしれない…。

しかし今は、おつかれ&ありがとうYellowと言っておこう。
再び「あのハコでプレイしてみたい!」と思える場所が生まれることを祈って。