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著作権法違反で男逮捕 ネットにゲーム画像 共同通信

「gameonline」運営者がゲーム画像の無断公開で逮捕 ITmedia

数年前に『ポケモン』のやおい系同人誌を出した女性が任天堂に訴えられて逮捕されるという事件があった。ここなんかに詳しい事件の経緯がまとまっているから、すっかり忘れているひとは読んでみるといい。印刷所までが共犯として(結果不起訴処分になっているが)書類送検されている。
このときは、エロだったというのが最大のネックだったと思うんだけども、それ以前に巨大な規模になってしまった同人誌マーケットをどうにかしたいという各方面の思惑がまちがいなくあっただろう。自社の創作物を勝手に使用・改竄されるだけでなく、それを使って商売が成立して子供の小遣いとは言えないような額の金が動く限りなく黒に近いグレーの世界に脅しをかけておきたいという考えが働いたんだと。

今回のケースはもっと複雑で、普通に考えたら逮捕された田中クンがやっていたことは著作権法上認められた引用の範囲であると主張することも不可能ではないだろう。件のサイト『gameonline』が既に削除されてしまっているので、出典の明記とか引用を逸脱しないレヴェルだったかという客観的な判断はできないんだけども、報道によればメーカーの許可を取って掲載されていた画像もあったようだし、類似のサイトを見ても開発者のインタヴューとか、完全にアングラだったらやれない記事も載っているようだから、メーカー側も半ば黙認してるという状態だったと思われる。

ただ、ゲーム業界では、いまだに『ファミ通』至上主義みたいな考えが支配的で、週刊の情報誌である『ファミ通』で口火を切るように順次情報を解禁していくというルールがある。つまり、他の雑誌、テレビ、ウェブなどは通常後追いになるわけだ。どんな情報を載せるかにしても、画像、テキストすべてに渡ってメーカーがコントロールしているので発売直後にエンディングがばれるようなこともないわけ。よく言えばつかず離れずといったこの関係も、提灯メディアと大差ないところへ行く可能性も大いにあって、最大の影響力を持つ『ファミ通』であればメーカー側に提案を出すとか辛辣な記事を作ることもできるかもしれないが、雑誌自体が広告で成立している以上あまりに宣伝戦略から逸脱したことはできないはず。
ゲーム業界全体が冷え込んでいるという状況の中、少しでも売り上げを伸ばしたいメーカーと雑誌、彼らにとって勝手に記事展開をしてバンバンどこにも載ってない写真を公開してしまう上、すべて無料っていう『gameonline』ような大規模ファンサイトは目の上のたんこぶ以外の何物でもなかっただろう。

でも、逮捕の根拠がかなり曖昧なんじゃないだろうか。広告収入が月に10〜18万円あったなんて書いてあるんだけど、そんなのサーバの管理運営費でふっとんじゃうだろうし、サイトを維持していく労力に比べたらほんとに割が合わないインカムじゃない? それこそ同人誌やってたほうがよっぽど儲かるだろうよ。つまり、それが営利目的だったと断言するには、最低でも10倍くらいの売り上げがないと(まぁそんだけの収益が上がるんだったら、田中クンも逮捕されるような道は選ばなかっただろうが)。
P2Pでプログラムすべてを放流してしまうというのと、その表層的な一部分にすぎないキャプチャー画像をウェブに記事の一部としてアップするというのは全然行為の本質が違うよなぁ。まぁ事前に警告を受けていたようだから、それを突っぱね続けた結果なのかもしれないけど、“既存の公式なメディアでは本来行われるべき公正な報道や批評がない”っていう考えで彼らがサイトを作っていたのだとしたら、自戒すべきは変わることのない業界だったかもしれないし、田尻智の歩んだ道を信じて徹底的に争って欲しいよ。マンガやアニメの正式な引用すら、最近になってようやく正当な権利として認められはじめたばかりだというのにねぇ…。こういう事件があると「著作権のことを考えるきっかけになるからいい」と常に言ってきたけど、そんな悠長な事態じゃなくなってきたのかも。ねぇ、レッシグさん。