Sven Väthのクリスマス・メッセージ(前半部分)を勝手に翻訳

Cocoonのサイトに掲載されたスヴェンのメッセージ。今年を振り返るという内容なんですが、日本に言及した部分がかなりの分量で、大昔から彼を知ってる人間としては涙なくして読めないような内容だったので、大急ぎで訳してみました。
原文はこちら

親愛なるミュージック・ラバー、パーティー・アニマルのみんなへ。

僕のDJ活動30周年の記念になる今年、フェスやクラブに遊びにきてくれた全員に感謝したい。特にみんなのおかげで最高の喜びがあったことは言っておきたい。
魔法の瞬間にたどりつくために、みんなを本当に頼りにしてる! そういう瞬間をつくるには、フロアでみんなが一体になるような愛と献身が必要なんだ。親密さこそが平和と幸福のもとだと思ってる。


今年、僕の世界ツアーは全大陸(南極以外)におよんで、どこへ行っても手厚くもてなされ、リスペクトをもって迎えられたと思う。数えくれないくらいの最高にポジティブなエネルギーを感じる日々、熱気が充満したフロアで盛り上がる夜があった。


2月、シンガポール、京都、ソウル、台北を回るアジア・ツアーの後、東京のドイツ文化センターの招きで長年の友人、TOBYと一緒にパネル・ディスカッションに参加することになった。【21世紀のテクノ―日独友好150周年】というテーマで、芸術・音楽・経済の分野から300人ほどのお客さんが集まった。ディスカッションは、僕のDJ活動30周年を振り返ったエッセイやテクノやクラブ・カルチャーにおける日独の関係に関して進んだ。
僕はそもそも講演するような人間じゃないから、あんなに大勢の前で話をすること自体初めての経験だったし、このイベントはとてもエキサイティングだった。そこでの話は日本語ドイツ語双方同日通訳され、イベントの最後には日本人のテクノ・プロデューサーがステージに上がって、これまで見たことも聞いたこともないような驚異のヒューマン・ビートボックスを披露してくれるという嬉しいサプライズもあった。このとき、日本でプロデューサー・コンテストを開催することも発表。結果は7月に発表され、東京出身のアーティストJun Yamabeが選ばれた。彼はフランクフルトの〈Cocoon〉に招かれ、曲は僕のレーベルのコンピ盤『Dots and Pearls』に収録された。


続く2週間は、〈Future Music Festival〉に招かれてオーストラリアをツアーした。そこで行ったパースのギグはこのツアー中最も遠い場所でのステージで、言ってみれば世界の果てという感じだった。でも、どんなに遠くてもそこで迎えてくれた人たちも情熱と愛情をもって僕らの音楽をプロモートしてくれ、最高だった。


そんな折、このツアー中にニュースを見て、我が目を疑った。日本で起きた破局的な出来事に、心の底からショックを受けた。少し前にそこにいたばかりだし、すぐに日本の友人たちに電話をして全員の無事を確認した。たしか、ニュースを聞いた瞬間はシドニーのステージにいて、プレイ中のレフトフィールドの後にDJの予定だった。そのときすでに心の中で抑圧が始まっていたのだと思う。会場のテントには6000人のお客さんがいて、雰囲気も素晴らしかった。それで自分のセットをいいムード、ポジティヴな緊張感のなかスタートさせた。でもプレイしている間に悲しみが襲ってきて、そんなことは前には経験したことがなかったんだけれど、調子が悪くなってしまった。幸いプレイは2時間だけだったので、最後のレコードをかけ終わった後、すぐにステージを去って送迎の車に飛び乗った。車の中で涙が涸れるほど大泣き、嘆き悲しみ同情といった感情が自分の中から溢れてくるのを止められなかった。


疑いなく、これが今年一番エクストリームなDJ経験だった。そのとき、このままDJをやっていいのか間違ってるんじゃないか、もうわからなくなってしまったんだ。
世界で日々起きている目を覆うような出来事にどうやって立ち向かったらいいのか、よく自問する。高いモチベーションをもってステージに立ち続けるためだ。でも、正直言って答えはわからない。


ただ、大事なことは「いま、ここで」だと思っている。僕は音楽を通して、この「いま、ここで」に世界のどこにいても寄与できる特権を持ってる。ひとは、音楽で自己を開放することで自分の強さを取り戻せるし、日々生きていくのにその強さが必要なんだ。
ダンスはみんなに本質を取り戻させてくれる。カラダは嘘をつかない。動きの中で、僕らは「いま、ここで」を、そして喜びや楽しみがどれほど影響力をもつのかカラダで理解するんだ。
僕にとって、生きていくうえでの喜び、尊敬と愛情、感謝の気持ち、誠実さ、気づきといったことをアティチュードとしてしっかり持つことはとても大事なことなんだ。


(以下略)


Merry Christmas and Happy Holidays with your family and beloved ones and a magic 2012 – "The Year of the Dragon"!
Love
Sven

Svenありがとう! 久々に何もかも忘れてあなたのプレイで踊り狂いたいよ。