引っ越し

ウチの事務所が入ってるのは単なる住居用マンションで、仕事しながらチャペルでの結婚式を冷やかしたりベランダから花見ができたり夏場は蝉やスズメバチの襲撃に悩まされたりと、東京のど真ん中とは思えないような環境なんである。部屋の引っ越しはしたものの、創業以来ずっとここ。さすがに出入りする人間も増え、それにもまして大量の資料や在庫やもろもろがどんどんスペースを占拠して、どうしょうもない状況になりつつある。広いところに引っ越したいねーなどという話も経営陣(といっても二人だけだが)の間では出なくはないものの、やはり先立つものがないと…。それに、そんなことを考えたり下調べしたりする時間がない。

直接収入につながる業務以外にも、日々細々したやらなきゃならないことがある。大雑把に外務と内務に分けて考えると、営業や仕事を手伝ってくれる外部の人とのつきあい、それに資金を持ってくるというような部分はそれでもなんとかやってける。というか、相手のあるコトだと予定が決まったり話が動けばどうしたってやらなきゃいけないというモードになるわけで身体も頭も動く。じゃあ、内側のことはどうかというと、これが放っておきっぱなしになりがち。本来、組織の中に、そういうことをしっかり仕切ってきちんとやらないとダメですという人間がいるとうまく行くと思うんだが、どーも誰ひとりとしてそういう性質でないのかもしれない。大所帯だったらそういうひともテキトー人間たちとちょうどいい具合に棲み分けていけるのかもしれないが、人数が少ないとどっちかに浸食される。テキトー勢力が強いと、そうじゃないひとはストレスだろうしテキトースタイルにあわせてもらわなきゃならない部分も出てきたりして。ま、もちろん逆もまたしかりである。

ウチの隣は、ゲームなどの3DCGを得意とする映像系の会社が入っていて、彼らもずっと同じ建物にいたからそれこそ包丁借りるとか頂き物のおすそわけとかの近所づきあいもしてたんだけど、とうとう引っ越しするそうである。昨晩は、そんなお隣さんの送別会があった。社長以下、以前何回か仕事したことある古株たちは知っているんだけど、それ以外のひとたちとは廊下ですれ違うとき軽く会釈するくらいだったので、いろいろ話が聞けておもしろかった。と同時に、かつては大家であるMas山さんの号令で、『デジタルトキワ荘』にすると言って見た目にそぐわぬ高速のLANで各部屋がつながり各種若手クリエイターが出入りして活気があったマンションも、どんどん寂しくなっていくなぁという感じ。今回の引っ越しにしても、さすがに人数増えすぎて手狭だからという積極的な理由だし、いつかはそうやって巣立っていくというのは当然なんだけども。

お隣の社長さんは、結婚もして子供もいて、しかも噂だと家も買ったらしいし、それでウチの3倍くらいの大所帯の会社を抱えて、今度は引っ越しを機に別の会社も立ち上げたそうで、ほんと頭が下がる。その一方で、なんと若いスタッフの中に何人も、家を借りずに、これまで5年も会社に住んでいたという連中がいたということを初めて聞いて激ビックリ。そんな…。たしかに、常に隣は明かりがついてるなぁと思ってはいたが……。

まぁ誰しも完璧ではないということで。
引っ越しなぁ…。誰かいい物件紹介して下さい。