もう春の話か…

アニメ業界もゲーム業界も未だにその業界の中で一番力がある雑誌媒体に真っ先に優先して情報を流すという慣習があって、アニメだと『NEWTYPE』とか『アニメージュ』、ゲームなら当然『ファミ通』がそういうメディアにあたる。

アニメ誌は毎月10日売りで、この日は新年号の発売日だった。春の番組改編でスタートする新番組の情報が一斉に掲載されるということで、ウチで関わってる番組の情報も解禁になった。

もうずいぶん前から作業してきた気がする「交響詩篇エウレカセブン」という佐藤大の初シリーズ構成作品が、4月スタートなんである。ビバップの映画からおつきあいの続いているボンズの新作で完全オリジナルのロボットもの。実は、大はロボットものを手掛けるのは初めてなので、メインのメカを河森さん(マクロスの)が描くというのもあって当初から燃えていた。監督の京田さん、キャラデザインの吉田さんとまったく同い年で、新しいことをやろうっていう結束が強いというのも原動力になっている。そんなにしょっちゅう現場に出られるわけじゃないので、会議に数回出ただけだけども、かつてジブリにいた吉田さんの柔らかなタッチと水彩で描かれるスケッチなんかはちょっと見ただけでも心動かされるものだし、普段は物静か(というか無口?)な印象がある京田さんも初回のコンテを読んだらその緻密で気合いの入った書き込みと演出には驚嘆させられた。
シリーズ構成というのは、まぁものすごく乱暴に言っちゃうと脚本の監督みたいな立場で、全体の流れを決めて、あとは全部自分ひとりで書く場合は別として各話担当の上げてきた本をチェックして修正したりする役目。自分の担当分だけやってればいいというわけじゃなく全体の進行やプロデューサー的なことを考える必要もあって、責任重大だ。仕事量に比例するように愚痴も煙草の量も気苦労も増えるというわけだ。
ほんとだったら、そこまで入り込む企画だったら出資して権利者になればいいんだろうけど、そんな資金はどこにもないんだよ、悲しいことに。何千万単位の自由に動かせるキャッシュフローがないと、この規模のプロジェクトに出資なんてできませんしね。でも、ちょっと前に大人計画の長坂さんが書いた自伝的な本を読んでいたら、大人計画は最近クドカンや松尾さんが撮った映画に出資したということを書いてたな。最初はサクセスの秘密を盗めるかな(笑)と思って読み始めたら、あまりにも直感ビビビで動いてるダメでユルユルな行動指針がたくさん書いてあって違う意味では感銘を受けたんだけど、まぁ経営的な視点では読めませんよねぇという内容で、だからその映画に出資したというくだりは、ちょっと衝撃的だった。

そういう立場になってしまうと必然的に売ることを第一義に考える必要がでてきて、今みたいに「現場のキモチ」で共闘しようぜみたいな連帯はできないようになるのかなとも思うし、難しいところもあるだろうな。最近はそういう話をよくする。まぁそんなことは腐るほど余剰金があったとき初めて考えろや、と言われるとその通りなんですけどね。

で、そんな流れもあって、ウチで「エウレカ」の公式サイトを作らせてもらうことになった。ウェブ関連は最近なんか受注が増えていて、ひとを増やさないことにはいっぱいいっぱいになってきてるんだけど、放っておくとろくでもないものができるに決まってる(ようやくアニメ作品も必ず公式サイトがあるというのが普通になってきたんだけど、どれもこれも、そのあまりにひどい出来には唖然とさせられるよ!)ので、運命共同体のつもりでガッツリやることに決めました。現状、自分でディレクションやってます。リアルタイムで進行する(これは、映画やDVD、ペイチャンネルなどの視聴者が自分のタイミングでバラバラに作品に触れるのでなく、かなりの数のひとが同じ日の同じ時刻に一斉に同じコンテンツを見るという意味)テレビの企画は初めてなので、大変そうだなぁという恐れもありつつ、反響が楽しみでもある。性格的に、自分で全部やりたいと思ってしまう傾向が強いので、小さくても世界が作れるウェブの制作は割と向いていると思ってるんだよね。チマチマ小さいことをいじるのが結構楽しいという。んなこと言ってるとちっとも儲からないと思うんだけどさ。