少女なマンガのファンはどこにいる

こないだ東宝のひとたちと食事(と言うか明らかに“呑み”)する機会があって、日比谷よりさらに新橋よりの彼らの馴染みの店に連れて行かれた。要するに周りはほとんど赤ら顔のオッサンという環境で、どこに耳があるかもわからんのにみなさん結構大声でまだ発表になってない映画の話をするもんで、ちょっとどきどきしながら聞いていた。

で、一番「へぇ」と思ったのが中島美嘉宮崎あおい『NANA』を実写映画化するという件で、同席していた元ヤンだという女性は原作の大ファンだとかでかなり『NANA』の素晴らしさを熱弁していておもしろかった。

そもそもマンガに登場するミュージシャンとかがダメで(今考えると上條淳士の『TOY』とかも相当サムイ気がする)、さらにあの微妙にサブカル入った設定や絵も苦手なので、まともに読んだことないんだけど、少女マンガというマーケット自体が緩やかに死滅している感じがする現在(行動範囲内に少女マンガを一切置いてないという書店の存在や、少女マンガは買い取りしないという古書店をいくつも知ってる)、あの作品がそんなに支持を得ている(累計1700万部以上だって)という現象には興味がある。

一方、ウチで吉田秋生『イヴの眠り』と並び、唯一買ってる大好きな少女マンガが羽海野チカの『ハチミツとクローバー』なんだけど、こっちも今度アニメ化される模様。『ハチクロ』の素晴らしさは筆舌に尽くしがたく、いちいち具体的に書いていたらそれこそ夜が明けてしまうという。舞台が美大というのは普通に考えるとほとんど一般性がない設定だと思うのに、絵を描くひと以外でもたくさんファンがいるのはとても嬉しいし、作者のキャラ作りや心情描写が非常に巧みなことの証左かもしれん。登場人物が多いからバタバタとしがちだと思う複雑な群像劇において、じわじわと追い込むようにちっぽけな人間のどうしょうもない気持ちを描いていて、特に最新の6巻ではあまりの切なさに、おいら読みながらボロボロ泣いてしまうほどでした。
正直、あの淡々とした世界がべたっとしたアニメの絵になってしまって、なおかつ声や音がついたときに羽海野ワールドの瑞々しさみたいなものが失われないのだろうかと心配してしまうんだけど。勇気ある挑戦だよなぁ。
個人的には、これってむしろ連ドラにでもしたほうが広がりがあるように思うけど。『オレンジデイズ』がOKなんだったら、もっといいものが作れるんじゃないの。