物書きやメディアのレゾンデートル

町山さんが『スター・ウォーズ エピソード3 シスの復讐』に関して書いた原稿を映画会社に検閲→改稿指示された挙げ句、雑誌掲載されなかったという話を書いてる。しかも、相手から送りつけられた赤入れチェックをそのまんま掲載しちゃってる。いやぁ、彼のこういうこどもっぽいケンカ上等姿勢、大好きだわ。北朝鮮や中国じゃあるまいし、好きなことを好きなように言える民主主義国家だと信じ切って暮らしているこの国で、実はジャーナリストが思ったことを記事にする自由もあんまりなかったりするというのは、やっぱキモチワルイよね。たかが娯楽映画のことでなに必死になってんのって斜に構えるのは簡単だけど、根深い問題だろう。馬鹿のひとつ覚えみたいに問題になりそうな芽を機械的に全部潰してしまえっていうことしか危機管理の方法がないと思ってる腐れ頭な輩は、ぜひひとや組織を管理するようなポストから消え去って欲しいものだよ。

ちょっと意味あいは違うんだけども、自分もこないだロイクソップの新作のレヴューを頼まれて、その原稿でレコード会社を挑発するようなテキストを書いてしまったんだよね。まるでPCソフトみたいに著作権うんぬんの注意書きと貸し出し相手の名前が記録されて封印されたサンプル盤が送られてきて、あまりのものものしさに何事かと英語の注意をちゃんと読んでみると、要は「この盤はおまえ専用に貸したもので専用の透かしが音に埋め込まれているから、違法にリップしてネットに流したりすると足がつくぞ」という脅しが延々書いてあるわけ。そりゃ昨今は関係者かメディア関係から流出したとしか思えない音源が発売前からネットに流れてるっていう状況はよくあることになってしまっていて、何の対策もせずに手をこまねいてるわけにもいかないし、それで多少でも売り上げの減少を食い止められるならっていうレコード会社の気持ちもわからないではない。でもさ、微々たる稿料に泣かされながらいい音楽が少しでも広まってくれればという気持ちで作品紹介しようと思ってるライターなり批評家なりを犯罪者扱いしてるわけで、CCCDでリスナーをひとくくりに犯罪者扱いしたのと同様、あんまり気持ちいいもんじゃねーわな。それだけだったらまだしも、サンプルが全曲収録されてないっていうひどいものだったから「ありえねえ!」ってことを文末にぶちまけたわけさ。
したら、まぁ当然のごとくすぐに編集部から電話かかってきて、ちょっと誤解を生んでやばいことになりそうな部分を変えてくださいっていう話になったのね。字数が少ないところに無理矢理詰め込んだ苦言だから、読み返すと確かにやばすぎるかなというところがあって、結局いろいろ相談した結果誤解しか生まなそうな一節を削ることで合意した。この件は、編集者に話を聞く限り本国の親会社の方針だとか現場担当者のレヴェルではどうにもならないこともあるようだし、特に検閲とかっていうものではないんだけども、媒体にしても書き手にしてもそういう扱いをされてることに何の怒りも感じないのかなという疑問は湧くでしょう。そんな些細なことでレコード会社と揉めてもしょうがないと思ってるんだろうけど。売れてる国内アーティストの取材記事なんて、検閲されまくりだったりするしな。

日々2ちゃんとかmixiとかで悪意しかない批判をたれ流してなんかやったような気になってる連中はホントかわいそうだとは思うけど、でもそれが正義の鉄槌だって誤解しちゃうくらい本道のメディアが腐りきってるっていう事実もあるんだ。映画業界だとかスポーツ業界だとかファッション業界だとか…自分のほとんど知らない世界でもおんなじようにどうしょうもない威圧や言論統制や馴れ合い、歪んだシステムが生んだ歪んだ情報がまかり通ってるんだろうなぁ。