そんなにペが好きかい?

あんまりネタバレしてもどうかと思うので、久しぶりにレコードを聴いてゲラゲラ笑うという体験をさせてもらったリリックに関してはあえて触れないようにしよう。

以前も書いた七尾旅人くんと打合せやレコーディングをしてるとき、ちょうど彼は「聖☆おじさん」のゲストとして呼び出され、たぶんMONTAGでの濃すぎるおっさん大集合な現場に立ちあっていた直後だったから、その愉快奇っ怪お誕生会?な現場の様子を話してくれた。それを聞いた後でも、正直ここまでのものに出会えるとは想像できなかった。

電気グルーヴスチャダラパーが組んで誰が何やったとかわからないくらい、長年連れ添いながらも空中分解してたグループがフッと再結成したというくらい、ぐちゃぐちゃに渾然一体のドロドロスープな音をちゃんとアルバム一枚持続する緊張感で作っちゃったっていう事態。よくよく考えると、コレってたぶん10年前だったら相当な話題になって鬼のように売れまくったんじゃないか。でもそれを今やっちゃう凄み。加齢臭の漂う危機も包み隠さずさらけだせちゃう強み。

バカだなぁっていう感想しか湧いてこないんだけど、それなのにトラックがむちゃくちゃかっこよかったりして、後追いで聞かされた初期の電気の曲に対して感じた“存在自体の超絶のオリジナリティーと面白さにトラックが全然追いつけてない”って印象をまるっきりリベンジされてひっくり返されてしまった感じ。
例えばロックの偉人とか評されるひとたちだって、スタイルを確立しピークを迎えたあとは、自らのパロディー的な行為でお茶を濁したりどんどん枯れた表現に向かって伝説と閉じた顧客の熱狂のサークルに身を殉ずるようになるのが普通だったと思うんだ。いったい誰が、15年以上のあいだギョーカイをサヴァイヴしてきたおじさんたちにここまで熱く、身を切って血を流した作品を期待したかって話ですよ。

荒川良々堀江美都子が同列にクレジットされてるアルバム…。『タイガー&ドラゴン』が今日で終わってしまったことに果てしない喪失感を感じると同時に、小学生のころの下敷きの中の切り抜きはミーちゃんでも百恵ちゃんでも蘭ちゃんでもなく、ミッチだった僕にとって、これはもう事件としか言いようのないできごとなのです。

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※宇川さんのPVが収録されたDVDと、やる気のなさが素晴らしい鬼怒川での単なるスナップを収めた分厚い(紙が)写真集がついたこっちが絶対オススメ