愛というのじゃないけれど

映画関係の仕事をしているひとたちと話していて、皆一様に『キング・コング』がすごい!って言っていて話に入れなかったのが悔しくて、無理矢理時間を工面して観に行った。3時間もある大作の前に20分以上CMや予告を流す映画館の神経が全然理解できないが、なんとかトイレにも立たず尻や腰の痛みも我慢の限界を超えずにエンドタイトルまで持ちこたえられた。

正直に告白すると、ファンタジーがまったく肌に合わない自分は『ロード・オブ・ザ・リング』の途中で眠ってしまったクチなので、ピーター・ジャクソン監督の熱心なファンでもないし、RKOのオリジナルはもちろん、ギラーミンのリメイク版もほとんど記憶に残ってなくて『キング・コング』自体に思い入れがあるわけでもない。だから、その分差し引いて考えてもらって構わないが、ピーター・ジャクソン版『キング・コング』はやりたいことを詰め込みすぎてギトギトのコテコテになってしまった壮大な失敗作なんじゃないかという感じを受けた。

アトラクションとしては1時間1000円でトータル3000円払ってもいいかなというくらいの密度と超絶のCG映像で楽しませてくれるので、なるべくでかいスクリーンで観たほうがいいよとは思うのだけど、劇場を出て反芻しようとしてもほとんど何も残ってない。あらゆる要素がこれでもかと詰め込まれているようでいて、怪獣映画としても人間ドラマとしてもラヴ・ロマンスとしても中途半端に感じてしまう。
振り返るとなんだったんだろうという印象の前半でもっとミニマムな情報をテンポ良く見せて30分短くするか、逆に『キル・ビル』方式で1時間増の4時間を前後編にしてもっとドラマを描きこむ方向か、なんかしらもっと素材を活かしきる方法があったような。もったいねーって感じなんだよ。
そう考えるとスピルバーグは何枚も上手。特に、狂った『宇宙戦争』のことを思い出すと改めてそう感じる。あっちのほうが20倍くらいよかったなぁと思ってしまう自分はなにかおかしいのでしょうか。

それにしても、『ブラザーズ・グリム』にあれだけの金と技術があったらどんな映画になったろうとか、そんなことばかり考えてしまった(笑)。

書き忘れましたが、コングにはアカデミー主演男優賞をあげてもいいくらい、素晴らしい演技をしていました。それだけはガチ。

キング・コング 通常版
キング・コング 通常版

ブラザーズ・グリム DTS スタンダード・エディション
ブラザーズ・グリム DTS スタンダード・エディション