株屋の発想

友達の結婚パーティーがあって恵比寿で6時間も酒飲んでいた。このひとの結婚のお祝いをするのも二度目だし、既にロンドンとセイシェルでも簡単に式をやってきたらしく、今回はレストランでのごくカジュアルなお披露目という感じ。

もう6年くらい前の結婚式で会って以来というひとたちがいて、何かのきっかけで記憶が(それこそ堤防が壊れて水が流れるかのごとく)どどどっと溢れてきたりするのは滅多にない経験でおもしろかった。ずっとロンドンに住んでいる主催者を筆頭に、みんなそれぞれが別々の人生を歩んでいるのでその間に起きていることはすごくバラバラで、でもなんとか話題を見つけようとして試行錯誤したりして。会話の距離感が取れないからちょっとぎこちない敬語混じりで、でもなにかをきっかけにすごく話が弾んだり。

そういう場での話というとあたりさわりのないものになりがちで、会場にはスウェードとかいかにも主催者が家で選んできましたっていう古めのUKロックが流れてたんだけど、音楽はちょっと趣味や年代が離れると全然共通の話題になり得ない。そうするとやはり最近の映画あたりが無難な話題だったりするわけだ。それでも『KILL BILL』がどーしたとか言っていると、話についていけない人もいて黙ってればいいのに無理に入ろうとして流れが淀んじゃうとか…手探りで。

んな中、主催者の実弟が証券会社勤めだとかでひとり話題を振りまいていたんだけど、いろいろこっちの話を聞いてきて、上場しましょうよとか言い出したので話をあわせてようとするも、どうも噛み合わない。例えば出版社はなぜ上場しないのかとか、最近じゃうどん屋だって上場するくらいだとか、そんなことを言ってくる。すべてがそうだとは思わないけれど、例えばゲーム会社なんて上場したが故に毎年ある程度の利益を確保して株主の信用を得る必要が出てきたために続編主義に陥ってしまった経緯があると思うし、直接金融で資金を調達するということが必ずしも作品をつくるというような業態の企業には向かない面があるのは明白だろう。またそのうどん屋はFC展開してるらしいんだけど、FCなんて極端なことを言えば合法的なネズミ講じゃないかという前提に立てば、そもそもそんなに利益率の高いわけでもない低価格メニューの飲食店をまとめただけで大きな成長を望める企業になるというのは、やっぱり甘い言葉に吸い寄せられた貧乏人を騙して加盟金だのを上納させて広く利益をかすめ取るからだろうという仮説しか思い浮かばない。
だから、誰もが幸せになるという前提があってそこで収益を上げ成長していく見込みが立つから多くの人が投資したいと思って成立する上場であればいいけど、成り立ちからして誰かの金を吸い上げることを見込んでいるような企業をマネーゲームの場に上げてしまうのは道義的にも問題あるんじゃないのとか言ったんだけど、「上場させてそのとき10倍にも100倍にもなった元手で逃げちゃえばいいじゃないですか」みたいなことを返される。でも、本来経営者たちはその会社の将来性をアピールし、それが評価されて買いたい人がたくさんいれば、上場時に高値が付くわけだ。そんときにすぐ内部の人間が自分の持ってる株を売ってしまうとしたら、それは自分たち自身で「もう将来はない」って言ってしまってるようなものじゃない。

さすがに最後には「んなことしてたら、リキッド・オーディオ・ジャパンじゃん」とかって(たぶん株屋にとっては嫌味に聞こえるかなぁという)ことまで言ったんだけど、「いいんですよ、別に投資する人たちは自己リスクでやってるわけだし死ぬほど金持ってるから」とヘラヘラ笑っているという。うーん、ああいうひとたちとは友達にはなれないかもなぁと思ってしまう自分はダメなんだろうかね。だって、万が一上場するぜぃみたいな機会が訪れたら、ずっとそういう連中と顔つきあわせて仕事しなきゃならないわけじゃないですか。