聴覚体験を更新するリッチー・ホゥティンの新作MIX DVD

そろそろ入荷したかなと久々に渋谷に寄ってCISCOへ行く。目当てのブツは、リッチー・ホゥティンの新作ミックスCDと、以前もちらっと書いたオルター・イーゴのリミックス集。どっちもヨーロッパでは先月末にリリースだったからね。

でもCISCOでは影も形もなくて関係ないものたくさん買い込んで、テクニークにもなくて、ユニオンにもなくて、でも諦めきれずに「売り切れ?」って訊いたらリッチーのほうだけ在庫確認して倉庫から出してきてくれた。いや、これホントすげーよ。まだDVDのほう聴いてないけども。DVDで、「聴く」んだよね。
昼間から爆音で聴いてみた。うちは5.1ではなく、4chでのファントム再生だけど、映画だとたいがい申し訳程度にしか鳴らない後ろのスピーカーが大活躍。しかもですよ、歓声とか環境音みたいなものが背後から鳴るというようなよくあるタイプのサラウンドではなく、ひとつひとつ吟味された音が前後で完全に分離した状態で鳴る。これは、まったく新しい体験だよ、マジで。まさにクリック音の世界に包み込まれるという感覚で、目を瞑って音に集中したらめちゃくちゃ飛ばされるわ。
これを機にテクノの盤はみんなサラウンドになればいいとまでは思わないが、一度これを音フェチなひとに聴かせたら、みんな家にサラウンド環境揃えようと思うんじゃないかな。シアターシステム買おうとかってときも、店にあるニモとかスターウォーズとかで音をチェックするんじゃなくて、これを持って行ったらいいと思う。ドルビーデジタルだと圧縮がすごいし、DVD-AudioはもちろんDTSと比べてもダイナミックレンジが狭いわけで、正直いい音とは呼べないが、そんなスペック上の議論は吹き飛ばす説得力がこの作品にはあるよ。家に再生環境ないひとは、せめてドルビーヘッドフォンで聴いてみたら?

DE9 | TRANSITIONS | CONCEPT
DE9のプロジェクトは、僕にとって常にDJやパフォーマンスの概念が将来どこへ向かうのかを考察する実験の場だった。
1999年、DJミキサーのメーカーがエフェクトの機能を積極的に採り入れる前に、最初のDE9はリリースされた。タイトルはシンプルに『DECKS, EFX & 909』(=ターンテーブルエフェクターそして909ドラムマシン)とした。この最初のトライでは、幾重にも重なったトラックをデジタルとアナログのエフェクターを使って変容させることで、どれだけ音を操ることができるのかに挑戦した。

2001年、ABLETONのLIVEが世に出る何ヶ月も前、DE9の2作目が完成した。その作品、『DE9: CLOSER TO THE EDIT』では、使われたトラックの真の構造により深く分け入った。細切れにし、再接合し、微細な編集を施し、そして膨大なループを整理することで、ひとつのまったく新しい楽曲を生み出したのだ。

そして、2005年の今日、ABLETONほか多数のソフト/ハードメーカーのシンク、ループの技術は誰もが使う一般的なものとなった。『DE9 | TRANSITIONS』は、前2作を踏まえたうえでそれら新技術のもたらす自由を享受し、未踏のミキシングの世界を、変移のかなたを探索するものだ。しかし今回、変移の世界の探求はサウンドにおけるX軸とY軸(時間と振幅)だけでなく、空間のZ軸(深度)も含まれる。DJミックスの世界に、初めてリスナーを取り囲む5.1chのサラウンド環境の扉が開かれたのだ。

『DE9 | TRANSITIONS』は徹頭徹尾、完璧なる没入体験をもたらすために構築され書かれた楽曲だ。それは、あなたがさらに核心(音楽そのもの?)に迫ることを可能にする。そう、今回は、よりエディットへと近づいたのだ。

DE9 | TRANSITIONS | VERSIONS
もともと、この作品は96分ノンストップの曲として制作されたもので、その真の姿はDVDで聴くことができる。しかしながら、未だCDが多くのリスナーにとって手軽であることから(それにCDというフォーマットの限界もあり)、74分のショート・ヴァージョンをおまけのCDに収録した。

さらに、ポータブル機器で音楽を聴くひとたち向けに、(DVD-ROMのデータ部分に)ステレオで96分のオリジナルの尺の『TRANSITIONS』を高音質のMP3でも入れた。ただ、この作品は何ヶ月にも渡る、たくさんのひとたちの努力の結晶であり、みなさんがこのデータを個人的な使用にとどめてくれるのを祈ってやまない ;)
DVDプレイヤーとシアターシステムを持っているひとなら、たくさんの特典も用意されている。もっとも重要なのは、この作品をドルビー・サラウンド5.1chのオリジナル96分の姿で楽しめるということだろう。

どんな方法でも、またどんな環境や状況で聴くにしても、みなさんがこれを楽しんでくれることを願っている。

RH 2005

でさ、使ってる曲、ざっと数えてみたんだけども、180以上ありやがるぜ!

DE9 | TRANSITIONS
DE9 | TRANSITIONS

DE9: CLOSER TO THE EDIT
DE9: CLOSER TO THE EDIT

DECKS, EFX & 909
DECKS, EFX & 909