TIGAのプラスチックなメジャー感とAtlantic Jaxxコンピのやりたい放題感

昔すごく好きだったレーベル、Atlantic Jaxxが97年以来約9年ぶりのコンピを出して、何気なく聞いていたらかつての思い出とかも含めバーッと当時のブラジリアンなフレイヴァーのハウスの感覚が蘇ってきた。トラックリストを見ると、最近では年に1枚くらいしかリリースしてない同レーベルのカタログをほぼ網羅していて、XLに行って以降どんどん興味が薄れていった彼らがどれだけない時間を割いてレーベルを続けてきたのかがわかる一枚になっている。そして、この音にやっぱり魅入られてしまう自分がいて、一方であれだけ楽しみにしていたTIGAのデビュー盤『SEXOR』は、なんだかあまり楽しめなかったんである。
そりゃ、彼が最初からマーク・アーモンドのワナビーさんな感じを持っていたことは否めないし、そもそも注目されたきっかけもその後のリリースもカヴァーばかりだった。でも、数々の秀逸なリミックス仕事(ヴォーカル曲を勝手に歌い直してしまうというお得意の手法だけでなく)からも、バックを固めるのがSOULDWAX、Jesper Dahlback、Jori Hulkonenといった連中であることからも、ダンスは完全に飲み込んだ上での新しいベルトルでのポップの提示、もしくはエレクトロクラッシュなどハイプだ論への完膚無きまでの反論を期待できるんじゃないかとすら思っていた。今回、TIGAが提示してきた音からは、どっかで耳にしたことのあるフレーズやメロディや唱法の劣化コピー的な響きが一番おおきく聞こえてきた。
メジャーを意識すればつまらないものしか生めなくなるというテーゼが必ずしも正しいとは思えないのだけれど、少なくとも自分の中には未だそんな感覚が渦巻いていることに驚いてしまう。だからって、ベースメント・ジャックスが「Samba Magic」や「Fly Life」のヒットのあとも頑なにインディーにこだわって、自分のレーベルでしか作品を発表しないというスタンスを選んでいたら、未だに彼らが注目されていたかも、レーベルが存続していたかすらも怪しいんだけど。