PIRAMIという不思議ないきもの

かつて、東京芸大在学中にクワガタレコードというちょっと親近感を持てるネーミングのインディー・レーベルを立ち上げて話題をさらったPIRAMIという女性作曲家がおり、結構近いところにいたと思うんだけどもずっと接近遭遇の機会がなく、2年ほど前にある会合で偶然にあいさつを交わした。
かつて、というのも失礼な話で、彼女はその後CM音楽の制作やUAのプロデュースなど当時よりよっぽどメジャーな仕事をしていて、おいらたちがいそいそとレイヴの熱狂の残滓をしぼりつくさんとしてるあいだに一足飛びに<上がり>に手をかけてるような感じもあった。

正直なところ、かつての「天才美少女作曲家」といった類のあまりにセルフ・プロデュースがすぎてしまったところや、アーティストにありがちな夢見るようなイリュージョンの世界と乙女チックな舌足らずで支離滅裂な発言が合体したなんともいえない香ばしい存在感は、どーにもこうにも苦手なものだった。

そんなPIRAMIが最新の成果として世に問うたイベントがかなり衝撃的で、実際にそこに行って目撃したわけでなく単にレポートの類を読んだだけなのだが、それでも興奮してしまった。

PIRAMI meets 喪服の裾をからげ
http://www.mofukunosusowokarage.org/yokohama/

もともと、喪服の裾をからげというのは福嶋麻衣子(彼女もゲーダイなひと)のパフォーマンス・プロジェクトで、なんというか一発芸とネット通販とチャットルームとをビデオ・ストリーミングの俎上でアートに昇華した、とかそんな感じ? それが即興作曲+演奏と組んだというのが今回のプロジェクト。

値付けにしたがって購入者が出ると(300円の曲とか)、PIRAMIがその場で300円の価値があると思われる即興の曲を譜面に書いていく。で、それを弦楽隊がその場で初見で演奏するというもの。横浜 BankARTでの生演奏は、その場にいるヒト(単なる観客)にしか聞こえず、パトロンであるネット経由の参加者は自分の買った曲が聴けないんだって。まぁもし万一誰も購入者がいなければ、会場のひとたちも何も聴けないわけですが…。
本人は「著作権問題や音楽配信問題にたいする音楽家からのアプローチ」だとか「聞く側の方に音楽を聞くって行為にかんして問題提起してみたかった」なんておっしゃってるんですが、そんなことよりパンクじゃなぁーという感じ。

お手軽に電子的な演奏でなく、わざわざ正装と五線譜とストリングスという組み合わせを持ってきたのがイイな。なんか、かつてはフロア周辺にもこういうおもしろくて突拍子もないことを思いついて、なおかつ実行するやばいこ(学園)がたくさんいたと思うんだけどね。どーでしょーか。というか、彼女自身もテクノ好きと公言していたわけだけどね。