iTunesとiPodのギャップレス再生対応は、再びアルバムの作り方を変えるか?

日本では今日の早朝に発表された、新しいiPodとiTunes7が地味だけど「うん、Appleはちゃんとユーザの声を聞いてるなぁ」と思ったのは、長らく問題になっていたノンストップの構成になってるCD(クラシックや多くのライヴ盤、またはDJミックスなど多数)を普通にリップすると再生時に無音部分ができてしまいブツと音が切れてとっても気持ち悪いという症状を、ついに解決してくれたこと。あまり技術的なことはよくわからないんだけど、ATRACOgg以外のエンコード方法(つまり、iPodで採用されてるMP3やAACなど)は基本的に曲間の無音が生じてしまう仕組みだそうで、今回の改良はそれを克服する方法をソフトウェア的に組み込んだということなのだろう。
WalkmanではATRACなので最初からギャップレスで再生できたはずなんだけど、あんまりそこを売りにしてるという話は耳にしない。一方で、iPodではFAQと言ってもいいほど、この問題がずっと取り上げられてきた。回避するには、CD全体を1曲としてリップしてしまうというかなり強引な「CDトラックを統合」のオプションを選ぶしかなかった。
一時ほど買わなくなったものの、まぁクラブ・ミュージック好きなら相当量のミックスCDを持ってると思うんだけど、これを全部そうやって1枚=1曲で取り込んでいくというのは正直抵抗があって、おいらは自分のライブラリにほとんどミックスものは入れてない。基本、ライブラリ全体をiPodと同期する設定にして全体をシャッフルして聴いているんで、あまり70分の曲が増えると使い勝手が落ちる…という懸念があった。なので、今回の改良はホント大歓迎だ。これまでどうやって提供したらいいかよくわからなかったからUPを躊躇していたノンストップのアルバムも、今後は心おきなくiTunes Store(ゲームや映画も本格提供するようになって、名前が変わりました)に出していけるってもんだ。もしかしたら、今後、StoreでのDJミックスの需要が高まるんじゃないかって気もする。

iTunesiPodで音楽を聴く(シャッフル再生)というのが、リスナーだけじゃなく音楽の作り手のあいだでも「体験」として共有されて以降、曲間にブリッジ/インタールード的なものを挟んでノンストップ構成で聴かせるアルバムの比率はかなり下がったんじゃないかと思う。CD時代よりさらに「頭から通して聴いて下さい」ということをリスナーに強要するのが困難になってしまったし、一番親しみのあるリスニング環境(=iPod)でまともに再生されないというのは結構な衝撃だったからだ。なので、例えばマドンナの最新盤『Confession On A Dance Floor』がノンストップ構成になっていたのはかなり驚きだった。特に前半、一聴して「え〜、こりゃないよ」という状態になってしまうのが明白で。なので、今日、新しいiTunes7をインストールして、真っ先にこのマドンナのアルバムを再生してみた(エンコードAAC)。まったく問題なくシームレスに再生される。ノーギャップ! 素晴らしい。遅かれ早かれこういう技術的なイノベーションが起きることを確信していたのかなぁ。音楽の中味がこうやって再生機器の事情に左右されてしまうというのはばからしいということをいうひとがいるかもしれないが、かつては46分というアルバムの尺が33回転のLP盤の限界によって設定されていたし、CDの収録時間のせいで70分以上だらだら詰め込んだ作品が増えて、逆に最近はもっとタイトに短くするということを意識的に選択するアーティストもいる。時代の流れ的にはパッケージソフト時代のしばりはどんどんなくしていこうという方向にシフトしていくのかもしれないけど、敢えてそこに抗うチャレンジも続けていきたいとは思うんだよね。ネット配信どんどんやってこう、みたいな気持ちと矛盾している? たしかにね。でも、盤で聴こう、アルバムとして聴こうという熱心さも、アートワークやなにから全部込みでモノとしてお届けしたいというこだわりも、捨てきれません。

蛇足だけど、今回のアップデートでiTunesが自動でAppleのサーバから未登録のアートワークを取ってきてくれるというオプションが加わって、全然アートワーク登録なんてしてない自分は小躍りしながらその機能を試したわけ。しかしね、世の中そんなに甘くなかったね。やたらにサーバとのやりとりに時間かかった割には、ほとんど増えてませんアートワーク……。新機能でアートワークがアニメーションしながらアルバム単位で閲覧できるという(元はCoverFlowというアプリだそう)のを眺めていたら、なんか、ようやくデータでもある程度所有感(というのも変だけど)のあるリスニング環境ができはじめたのかな、という気になった。