本広克行の舞台にK.O.

ROBOTの方にお願いしてチケットを予約していたのをすっかり忘れていて、大に怒られつつ赤坂のまだ新築の匂いが残る劇場へ。本人曰く「こっそり」と進めたという舞台【Fabrica 10.0.1 】は、僕の苦手な大げさな演劇的表現も排除されていたし、緻密に計算された話の構造と細かい演出が、“映画好き人間たちの人生と映画作り”というテーマ以上に映画的で非常に好感が持てた。帰りぎわに出口でものすごい久々に本広監督と会えたので、とても良かったと伝えられた。事前の知識を仕入れることも、芝居というものに対する気構えも、そもそもその晩ああいった作品に出会うことも、まったく想定してなかったから上下にも左右にも気持ちを揺さぶられてしまって、帰ってもなかなかその整理がつかず眠れなくて大変だった。

10年前の夏休みに自主制作で映画を撮った仲間たちが、現在どんな生活を送っているのか、時間の経過や環境の変化がどんな年輪を彼らに刻んだのか、細々と空間と時間を行き来しながら一貫して映画というフィルターを通しつつ描いていく。親の介護や、思い描いたとおりに進んでいかない人生の後半戦という、とっても重いモチーフが舞台が進むにつれて浸食してくると、劇場の雰囲気も頻繁に起きる笑いよりはだんだんと緊張したものになっていく。歳をとるってこういうことだろって正面切って言われてしまうと納得せざるをえない。客にそこまでストレートにぶつけていくのはステージというメディアだからこそできたことなのかもしれないが、それがあの本広克行からの投げかけだと思うと余計に考えさせられる。はじめてとりくんだ舞台の仕事が楽しくてしょうがないという雰囲気で客に挨拶する彼の顔からも、原点回帰的なモチベーションを感じたのだった。ビジネス的には「うぉ、演劇オモシロイ」ってノリに没入していく危険を感じなければいけないはずなのに、すげぇやられたとむしろそこに相乗りしてしまう自分がかわいくもあり一方でダメだと思ったり。


http://fabrica.playxmovie.com/

早速DVD化されるみたいですね。値段安いね(2940円)! 本広日記によれば連日盛況のようですが、絶対利益だして続けていってほしい企画です。

Fabrica (10.0.1)
Fabrica (10.0.1)