ニッポンの夏、ワイアーの夏

今までさまざまな形でお世話になってきたWIRE。もう7回もやっているというのがちょっと信じられない感じもある。毎年スタッフの皆さんと話をすると、やっぱり開始時には二十代だったひとたちも既に三十代半ばなんて感じでみんなWIREが回数を重ねるごとに歳をとっていくわけで、準備から撤収まで壮絶な日々を乗り切るのは体力的に大変だよぉという避けられない状況はあるみたい。年齢を感じさせず相変わらず元気って印象なのはアーティストのみなさんだけで、一番「もう歳で」とか泣き言いってるのは客というよくわからない図式。自分ですらそういう側面がないとは言えないので、お客さんが「もう無理かも…」って弱気になって30前に引退なんて思うのは致し方ないのかもしれないが。

いろいろな事情もあり、今年のWIRE05は自分にとって最後のWIREになるなというのがわかっていたにもかかわらず、直前他の仕事や会社の引越やいろんなことが重なって正気を保つのが精一杯という状況になってしまい、もう体力的にも精神的にもボロボロの状態で会場入りした。以前にも2日くらいほとんど寝てない状態で行ったことがあったけど、今回は周りにそういう顔晒すわけにも行かずカラ元気を精一杯絞り出していたからねぇ。

14時間びっちりはさすがに倒れそうだったので、エレンのころに会場入りしてちらっと横目にフロアを見ながら楽屋へ直行して、スタッフの皆さんに挨拶してリハの様子など確認してからセカンドフロアへ。KAGAMIの本番前に、どうしてもヨリスを少しだけでも聴きたかったから。セカンドはまだトップバッターのフランクがやっていて、5分ほど時間が押してるみたいだった。その後のシンくんのライヴをフルで聴いて横長から縦長にレイアウトが変更になって、ちょっと旧リキッドルームみたいな雰囲気になったセカンドの濃密な空気を堪能する。壁面に映し出される宇川さんの映像も例年どおりキちゃいすぎな感じで、たまに目をやるとあややがループされてたりして目が点になったり。
すでにギュウギュウだったセカンドだけど、氣志團のギターリフをネタにした曲などめいっぱい盛り上げたシンくんが終わるとサーッとひとがひいて、特に後ろのほうは踊れるスペースができる。やっぱりヨリスを目当てにしてるなんてひとは500人くらいなのかなと思ったんだけど、中の様子は関係なく入り口で入場規制していたようで、少しずつ人が増えていく。途中腹が痛くなってトイレにこもっていたりしたので実質30分程度しか聴けなかったんだけど、奇をてらわず、ゆる目ながらファンキーでハウシーでアシッディーな展開でじわじわあげていく感じは非常にきもちよかった。ラスト近く曲がつながった瞬間から盛り上がって例のピアノで大変なことになったっていう「Incident」へ持ってくところを後で連れから聞かされたのは結構なショックだったけど…。

8/26に出るKAGAMIの3枚目のアルバム『SPARK ARTS』のラストを飾るしっとりしたヴォーカル曲は、モデルとしても活躍してるMEGちゃんが唄ってくれた。Connectでのライヴは歌モノもPCに取り込んだデータでやっていたんだけど、今回はKAGAMIにとっては初の試みでMEGちゃんにステージに上がってもらって生で唄うということをやった。Connectで既に何度か今回のアルバムにあわせた新しい形式のライヴを試していたと言っても、まったく構成が変わったWIREでのライヴはたぶんみんなドキドキだったんじゃないかと。MEGちゃんにしても、1曲とはいえいきなり1万人がうわーっと待ち構えてるステージに出て行って、事前告知もなにもしてないから誰も彼女のことを知らない環境で大事な締めの曲を披露しなければならないわけで。でも周りのそんな心配を余所に、本人たちは貫禄も感じるほどノリノリで最高のステージを見せてくれた。袖で見ていたらウェストバムとエレンが上がってきて踊ってる。しばらくすると、ふたりとも「すごくいい! 今回のKAGAMIサイコー!」ってわざわざ言いに来てくれる。なんだかジーンとしてしまった。

ステージ後、取材しているKAGAMIを待つ間、ヨリスの付き添いで来ていたテクネイジアのアミール(落ち武者みたいな髪型になってた!)や、TOBYちゃん、前夜祭で来ているクリストファー(・ジャスト)、AXISのヨーコさんなんかと軽く話をして、その後はもう一心不乱に踊った。我を忘れて6時間強。脚も腰もクタクタのヘロヘロになって。
ここ数年は仕事だというのもあって、自分をセーブしながらあまり羽目を外さないようにしていたし、「楽しむ」っていうモードにはならないで過ごしたWIREだったんだけど、今回はホント、誰が何やってるか観察するとか来年のために取材も兼ねてできるだけアーティストたちと話して情報ゲットしないととかプロモ渡して売り込まないととか、もうそういう一切合切をぜ〜んぶ忘れて、とにかく気のすむまで踊りまくったよ。いやぁ、ホント楽しかった。これでまた明日から、気分一新して仕事に立ち向かえるっていう気持ちになれた。ライヴが終わった後、「無事終わったし、ここからは楽しんでくださいよ!」って声を掛けてくれた道下さんに超感謝。

WIREが来て、夏がはじまる。
俺にとってはひとつの長い季節の終わり。