老いに直面する

小林よしのりの『目の玉日記』を読んだ。
よしりん(と敢えて呼ぼう)の著作を買ったのは、たぶん10年ぶりくらい。『ゴー宣』はSPA!でやってた頃以来読んでないし、最近どんな作品を書いていたのかも知らない。

本作は白内障にかかってほとんど目が見えない状態になった小林が、何を考えどのような治療を受けたかをつづった一種のエッセイマンガなのだが、昨年大きな話題を呼んだ吾妻ひでおの『失踪日記』同様、作家生命や人生の岐路に立ってなおその経験を笑いや創作のネタにしようという、凄まじいまでの思い切りがほとばしっている。
本来老人が患う白内障に若くして罹ってしまったということも、マンガ家という職業上死刑宣告に等しい視力を失うという病状も、いろんな批判にあいながらもプリミティヴなまでに思ったことをそのままぶつけるような作品を書き続けストレスを溜め込む生活を続けたことへの後悔も…。現象としては「売れっ子マンガ家に失明の危機?!」というような一行のコピーで表現されうる事態が、作者の生き方や思想にどれだけの影響を与えたか。そこに思いを巡らせると、どうしても老いという二文字に直面してしまう。

実際、自分もそろそろ人生の後半戦だとか死への意識だとか、そういうめんどくさいことを考えるとしごろになってしまった。けらえいこ内田春菊桜沢エリカ小栗左多里堀内三佳…女性たちの手がけるエッセイマンガは、パートナーとの生活や結婚〜出産という人生のなかでも祝福に満ちた瞬間をテーマにしているのに、この違いはなんなんだろうと思ったりもする。マイペースな趣味人で、人生謳歌しまくりだと思っていた高木サン(堀内ミカリンの“夫”)が、ご自身のブログ読んでいると悩み多き苦労人に思えてきたりね。

土曜の深夜にこんなことをグダグダと書いている自分も、ほんとにイヤになります。

小林よしのり 目の玉日記
小林よしのり 目の玉日記

↑かなりインパクトのある装幀、手がけたのは寄藤文平