コモエスタ坂本という筆者による、刺激的な見出しが躍る本『低度情報化社会』を読んだ。
光文社のこのペイパーバックのシリーズを手に取ったのは二度目。どういう基準で挿入してるのかわからない英単語がいきなり文中にでてくるのがちょっとウザイ以外は、なかなか練られたつくりになってる。ラインナップを見るとやたらに英語関連の本が多いんだが、編集者にやたらに英語コンプレックスがあるのか、それともとりあえず英語関係の実用書やっておけば外さないっていう変な実績でもあるのか…。もう少し危険な香りのする時事ネタや社会ネタを増やして、かつての別冊宝島のシリーズみたいになってくれたりするとおもしろいと思うが。まぁ町山さんみたいなひとがどこにでもいるわけじゃないから無理か。

さて、このコモエスタさん、昔雑誌『GURU』だとかに書いてたヌルチメディア・クリエイターってことで、それだけ聞いてああと思い当たるフシのある人には説明不要かなと。コンピュータやネットにアングラ臭やサブカル臭がついてまわっていた時代には、たくさんいたんですよね、こういうヒト。すごく頭良くて物知りで、でもやたらに嫌味や皮肉が多くて、敵を作ったり誤解を受けたりするために生きてるようなタイプ。ただ、低度情報化社会と化した現代、下手なこというとすぐに糾弾されたり炎上して祭られたりするので自動的にリミッターかかったのか、わりかし丁寧で洗練された物言いが基調にあって、ときどきジュワッと毒があふれるような文章になっていて、これが結構説得力あるんですわ。

Web2.0とかGoogleとかCGMとか、バズでヒップでクールなそういうキーワードをバッサバッサと斬り捨てて、世界はどんどん貧困でゴミだらけでどーしょーもない方向に向かってるぜっていう説を唱えているのは、まぁスタンスとしては当然アリなんだけど、今、ある程度メジャーな土俵でデジタルとかネットとか語るんであれば絶対外しちゃいけないだろうテーマを網羅した上でほとんど全部否定しまくってるところがスゴイ。しかも、批判のための批判ではないし、半年後には食えなくなってそうな旬を意識しまくった例え話やくすぐりを入れてまで敷居を下げようとしてるのはとってもエライ。森健『インターネットは「僕ら」を幸せにしたか?』と一緒に読むと、賞味期限がすぐに来ることを恐れず、広くさまざまな知識経験を持つ顔の見えない読者に向けて満遍なく理解を求めるようなやり方をいっそのこと諦めてしまったが方が、テキストととしての価値はずっと上がるのではないか、という感じがした。

いろいろ考えたこともあったんだけど、眠いからまた今度(とか言って、続きを書いたためしはないが…)

低度情報化社会 Ultra Law-level Information Society
低度情報化社会 Ultra Law-level Information Society