designers republicが倒産…!

昨日mixiやいろんなところで話題になっていてビックリしたニュース。

23年の長きにわたってイギリスの、いや世界のデザイン・シーンをリードしてきたシェフィールドのデザイン会社、デザイナーズ・リパブリックが1月20日をもってスタッフ9人全員を解雇し、倒産したとのこと。
現在のイギリスの経済のひどい状況は日々伝わってくるしよくわかっているけれど、それにしてもこんな身近で偉大な存在すらも(しかも、最近ではケータイのOrangeやCoca Colaのような超メジャー・クライアントと仕事をしていたのだから、才能が枯れてしまって仕事が減ったということでもなかったわけだし)舞台を去らなければならなかったという事実に衝撃をうける。

確報を最初に伝えたイギリスのデザイン系サイトCreattive Review。DR代表だったイアン・アンダーソンからのコメントを掲載

日本のデザイン系ブログ(国内での噂の発火元)ニテンイチリュウ

彼らのデザインの最初期のインパクトは、やはりAge Of ChanceとかPop Will Eat Itselfとかのミクスチャー感溢れるロックにあった。ロンドンに拠点を持って音楽のスタイルにかかわらずレコード会社と緊密に仕事をするというより、地元密着だったりアーティストとの関係で、そのデザイン言語を饒舌に広げていった。今調べてみたら、PWEIの「Def.Con.One」が88年、「Can U Dig It?」が89年だから、まさにアシッド・ハウス旋風の吹き荒れたあとの、一種焼け野原のような地平から雑草のようなDRのデザインが生まれてきたのだ。特に初期の、気が触れたがごとく派手な色彩を幾重にも使って、文字をキャラクター化させる(その過程で日本語を模したりアニメ的な表現が成長していく)世界は、普通に考えたらセンスがいいとはとても呼べないようなシロモノだったはずだ。
その後、同じシェフィールドのWarpというブリープ・ハウス〜テクノのインディ・レーベルのロゴからほぼすべてのアートワークまでを一手に引き受けるようになって、ようやくその才能がじゅうぶんに発揮できるキャンバスを得たとでも言うがごとく、次々とグラフィック・デザインの既成概念をぶち壊すような作品を発表していく。白ジャケ・黒ジャケがあたりまえだった12インチ・カルチャーで、彼らのような豊かな色彩感覚を持ったデザイナーが激しく自己主張をし、時代を作っていったのは幸福だった。決して単価の高いとは言えないレコードまわりの仕事、そんな中でも一番予算的にはきつそうなダンス音楽の世界に軸足をおいたことで、僕らは尋常ならざる量のDRの仕事を目にすることができた。あれだけの複雑な構造だったりレイヤーだったりが存在する初期のデザインのスタイルが量産されていた背景には、驚異的な判断の速さと明確なヴィジョンがあったにちがいない。ある程度の成功を収めると、その後は原点から離れてハイカルチャーや予算の桁の違う世界へと移っていってしまうひとたちがやはり多いなか、DRはごく最近でも当初からのスタイルやスピリットを持ち続けていたと思うし、イアンのコメントを読んでもそれを強く感じる。

他人事のようにこういう“事件”にコメントする立場にないことはよくわかっているんだけれど、それでも敢えて考えたいし、問いかけたい。それは、趣味嗜好のレヴェルじゃなく、もっと深いところで人間の生き方にまで関わることだったと思うのだ。誰もがそう信じたし、実際前世紀の最後の10年にはそういう気持ちだけが原動力になって起きたことがたくさん詰まっている。でも、実際にはそんなものすべてがカスだったんではと、21世紀になってからずっと実証され続けているんじゃないかっていう疑念をみんなが薄々感じているはずだ。なんでもっとうまくやれなかったんだろうという愚問すら(あれ以上どうやって?!)してしまう。だから、そもそもうまくやれないことを美徳とするようなそんな人間ばかりがいたんじゃないかと、もう一度思い出してみるべきだ。僕らはとっくにアフターマスではなくて現実の中を歩いている。